いうのかnインタビュー01「特産者」の親に聞く 

まさかうちの子が…

息子さんが「特産者」として能力に目覚めたそうですね。ご心境はいかがでしょう?

まさかうちの子が「特産者」になるなんてねぇ…。あの子、昔は地元のお祭りには絶対出てたし、「ずーっとここにいるんだ!」なんて言ってたんですけど、高校生になったぐらいですか、思春期なんでしょうね。「地元なんてダサイ」「オシャレな都会に行きたい」「アニメ映らない」「ライブやらない」とか言い出すようになっちゃって…。その、なんていうのでしたっけ? さ…ぶかるちゃー? っていうんですか、そういうのに憧れて都会に無理矢理進学しちゃったんですよ。地元なんて嫌いになっちゃたのかな、って思ってたんですけど、そんなことなかったんですね。ちょっと安心しました。え? それは帰ってきて欲しいですよ。地元に。可愛い娘さん、一緒に連れてこないかしら。無理かなぁ…あの子うぶなんですよね、昔から。

初めて召喚されたご当地名物が「氷見の寒ブリ」だったらしいですね。

そうなのよ! それ聞いたときはちょっと嬉しかったなぁ。あの子が幼い頃、よく家族で回転寿しに行ってたんですよ。そこで、あの子ったら毎回「ぶりください! わさびぬきで!」って板前さんに元気よくお願いしてたのよね。懐かしいなぁ。覚えてたのかしらね? 

これから息子さんは「特産者」として地元PRの為に活躍されるつもりなんでしょうか。

特産者って、凄く大変なんでしょう? あの子に勤まるかしら。この前電話で聞いたら「まだ決めてねーよ!」なんて言ってましたけど。大学もありますしね。…え? 学費免除になるんですか? え…地元の就職も有利? あらまぁ。知らなかったわ。ねぇ、お父さん。

「………」

まぁ、でも、なんだかんだであの子地元が好きだと思いますよ。田舎を馬鹿にするのは愛情の裏返しなのかな。お父さん、そっくり。素直じゃないのよね。

「………」

テレビを見ているかもしれない息子さんに一言どうぞ。

シンイチ〜、見てる〜? 元気にやってる〜? お父さんとお母さんは元気よ〜。特産者になったら地元にしばらく帰って来るんでしょ? 「かぶらずし」作って待ってるわよー☆ ね、お父さん。

「………」


ありがとうございました!
(インタビュー:地元ローカルテレビ局)

ご当地大戦 その世界 

地元の威信をかけて戦え、特産者たち!

観光PR合戦「ご当地大戦」
特産者の登場以降、観る者を魅了するその圧倒的なご当地PR能力は、多くの観光客を呼び寄せる結果になり、ご当地のパワーバランスは一変しました。そこで全国の自治体は観光客増加を狙い、地元で生まれた「特産者」を選出し、観光大使として送り出すのに躍起なったのです。

各地で乱立し、激化するご当地PRバトルを正常化し取りまとめる為、政府は「全国地域振興交流大会」通称「ご当地大戦」を開催し、国をあげての大イベントへと発展させることになりました。大会は世界中に中継され、日本を観光国へとPRすると同時に、優勝した都道府県は絶大なる観光客の増加を次の大会まで得ることは確実な上、万博並みの集客を誇る本大会の会場は前回優勝したご当地で行われるため、その利権も大きな目標となっているといえるでしょう。

(〜ご当地大戦の歴史〜 「観光革命」著・秋村和広 より)

「特産者」驚愕の能力 

その技は奇跡か、それとも…

未だに解明されない具現化能力
思い出から「ご当地名物」を具現化する能力を持つ「特産者」。その能力のメカニズムは未だ詳しくは解明されていませんが、能力に目覚めるきっかけになるのは、大半が、「強い郷土愛を感じたとき」であるケースが多いことや、具現化できるのは「記憶に残っているご当地名物」に限られていることなどから、郷土愛がなんらかの影響していることは間違いないと言われています。

特産者が呼び出す「ご当地名物」は多くの人の心を動かし、その経済効果は凄まじいものがあります。何故、ここまで観る者の心を動かすのか? 映像や写真とどう違うのか? それは、特産者自身の郷土愛や思い出を、具現化した「ご当地名物」を通して、まるでテレパシーのように深く共有しているのでは、という研究もありますが、詳しいことは未だに不明です。

ちなみに「特産者」は「とくさんしゃ」と呼びます。若い人、特に中学生の間では「イマジネーター」などのルビを勝手にふる人がいますが違います。


(ご当地大戦実行委員会・広報)

2-.jpg富山県の特産者たち。

観光課「特産者」係の苦悩 

知られざる勧誘の裏側

特産者担当の裏話
「特産者」って地元をPRするのが仕事じゃないですか。それをお願いするのが僕らの仕事。そう、地元で育って地元で生活してたら何にも問題ないんです。でも、やっかいなケースもあるんですよ…、そう、地元を離れてから能力に目覚めるケースです。地域の「特産者」として認定されるにはですね、住民票をその場所に置いてるかどうかが条件なんですよ。つまりですね、どんなに有能な能力者でも、例えば「東京」に住民票を移してたらアウト! 他の地域の観光課が「特産者」を勧誘するとペナルティになっちゃいますから! 大変なんですよ。ホント。

あと、複数の都道府県の名物を召喚できる特産者! いるんですよ、たまに。親が転勤族で。大変ですよー、大事な試合で、他の地域の名物出しちゃった日には!もう! 僕が怒られるんですよ!?


あ、ビールおかわりいいですかー。


とにかくですね、大変なんですよ。全部クリアしたと思ったら、今度は地元で取り合い。そりゃね、わかりますよ? 気持ちは。 自分の地域PRしたいですもん。だからと言って、特産者だって全部のご当地
名物知らないですからね。知識は勉強すれば得られますけど、召喚の源である思い出は、ほとんどが幼少期のものに影響されるっていうじゃないですか、そこは変えられないですよ。それを怒られても…。


エイヒレ追加でー。


そういうのもね、ケアするのが僕らの仕事なのは承知ですよ。でもね。少しぐらい愚痴ってもいいじゃない! 


冷やしトマトも追加! え? ない? お新香ならある? じゃあそれで!


とにかくね、僕が言いたいのは…


(某県観光課特産者係Aさん)


18歳の上京 

石動シンイチ・上京

3/20
シンイチは誰もいないホームで一人待つ。
三月だというのに息は白い。
マフラーを巻き直し、
少しぬるくなった缶コーヒーを飲みながら越後湯沢行きの列車を待つ。

「………」


アオヤマダイカンヤマハラジュクナカメグロ。

ビームスシップスアローズ。

ナツハナツフェス、フユハフユフェス。

富山にない。富山にはない。

スタバタワレコヴィレッジヴァンガード。

イオンにはある。高岡イオンには全部ある。

でもそういう問題じゃない。

全部用意されて喜ぶ子供じゃない。


東京に行きたいのだ。東京に。


うちの町には本屋が無くなった。一件もない。

Amazonがある? 楽天がある?

そういう問題じゃない。そういう問題じゃない。

全部用意されて喜ぶ大人じゃない。

アオヤマダイカンヤマハラジュクナカメグロ。

ビームスシップスアローズ。

ナツハナツフェス、フユハフユフェス。

それは楽しいかもしれない。

それは空しいかもしれない。

でもそれを自分で確かめないでどうする。

富山は嫌いじゃない。

でも何があるのかわからない。

住んでいたのに。生まれ育ったのに。

山岡は教えてくれなかった。

栗田も教えてくれなかった。



(これは富山に伝わる昔の詩)

ご当地大戦運営委員定例会議録#967・前編

議題:マスコットキャラクター

えー、では定例会議を始めたいと思います。

議長:本大会のマスコットキャラクターを作るという前回の議題の続きですが…

A:昔、ゆるキャラというものがセンセーショナルを巻き起こしたという話があります。

B:あ、うちのじいさんから聞いたことある。

C:その後に出た「ガチキャラ」と呼ばれるマスコットに一掃されたという記録がありますね。

A:ガチキャラ?

C:はい。真面目にご当地のことをPRすることで好感を得たそうです。

議長:ん? それは当たり前じゃないのか? 何をやってたんだその…ゆるキャラって奴は。

C:ツイッターで関係ないことを呟いたり、無茶苦茶な行動で人気を得た。と記録には…

A:そんなの、不真面目なだけじゃないか! ご当地PRっていうのはなぁ…!

B:まぁまぁ。

議長:で、本題の「ご当地大戦」のマスコットなんだが…

B:全都道府県のPRをサポートするキャラクターっていうことだよね。

C:ですから運営委員会のマスコットは全国から愛されないといけません。

A:難しいな…。

議長:うーむ……。

トントン

事務員:しつれーしまーす。コーヒーお持ちしましたー。

議長:あぁ。ありがとう。そこに置いてくれたまえ。

事務員:どーしたんですかぁ。皆さん煮詰まってますねー。

A:マスコットキャラクターが全然まとまらないんだよ。

事務員:えー! 楽しそうじゃないですかー。

B:なんか良いアイデアある?

事務員:わたしはー、こーいうキャラクターがいいとおもいますー。


(ホワイトボードに書き込む事務員ちゃん)

議長:おぉっ!



…続く




ご当地大戦運営委員定例会議録#967・後編
NEW

議題:マスコットキャラクター

(かきかき)


事務員:どうですかー? 可愛くないですかー。


議長:これは…!

A:…………。

B:…………。

C:…………。

japan.jpg


議長:いいじゃないか!

A:(えっ!?)

B:(おい)

C:(お腹痛くなってきました…)

議長:うんうん。日本列島をイメージしてるんだね。これは…着ぐるみの中に二人入るのかい?

事務員:そうですー。こうやってー、後ろの人の腰を手で持ってですね。

議長:ふむふむ。なるほどね。名前はなんて言うのかね?

事務員:えっとー、にっぽn・・・

A:ぎ、議長。これはちょっと…日本がディフォルメされ過ぎなんじゃないでしょうか。

B:そ、そうだよね。可愛いよ? 可愛いけど、ほら、ご当地を省略し過ぎたら怒られるかも。

C:瀬戸内海全部潰れてますしね。

A:あ、佐渡島も無いぞ。トキの居場所が。

C:津軽海峡も無くなりましたね。

B:大間のマグロ漁師が困る!

事務員:………ぐすっ。

A・B・C:!!!!

議長:君たち! 言い過ぎだ!

事務員:私…ごめんなさい…ぐすっ。みんな困ってるから、少しでも力になれば、って…ぐすっ。

議長:いいんだ。いいんだよ。ごめんね。せっかく考えてくれたのに…。

事務員:はい…。ぐすっ…しつれいします…。

(バタン)

議長:アイデアも出さずに批判だけして、あんなに頑張ってくれた彼女を傷つけて。いったいどういうつもりだ!

A:……。

B:…すみません。

C:…ちょっと言い過ぎました。

A:このキャラ、よくみると…可愛いかもな。

B:コーヒー冷めちゃった…ね。おかわり…くれるかな。

C:そういえば、このキャラの名前を聞きそびれましたね。

議長:よし、みんなで、謝りに行こう。


(コンコン)

A:さっきはゴメンな! 

B:着ぐるみに2人は入るって斬新でいいかも!

C:昔のゆるキャラのデータを見るとあれぐらいのデフォルメ、全く問題ない気がしてきました!

議長:そういうわけで、あのキャラクター、前向きに検討…あ、あれ? 会長!?

会長:どーしたの? え? 事務員ちゃん? 帰ったよ。もう定時だし。

議長;そ、そうですか。

会長:今日はデートだそうだ。 満面の笑顔で帰って行ったな。いいねー、若いって。

A:デート…。

B:笑顔…。

会長:お、キャラクター決まったの? 見せて見せて。

C:は、はい!

会長:……………………議長、あとで僕の部屋。



(凄く怒られました)